クレール美容室のブログ

現役の美容師にしか分からない美容の本音を書き綴っています。

「毛染め専門店」について思う事

最近は「毛染め専門店」が増えて来ましたが、それについて思う事を書いて見ようと思います。

超大衆からホームカラーの持ち込み、さらには自動先発機などによる超手抜きシャンプーをするサロンまで、今では何でもござれって感じの「毛染め専門店」

そんな中、先月ある地域情報誌に白髪染め専門店のオーナーさんの記事が掲載され、そこには「働きやすい環境づくり」としてパートの美容師さんを集めて経営していると書かれていたのです。

勿論、女性に働く機会が増えられる事は本当に良い事だと思うのですが、本文の中で気になったことがありました。

それはオーナーさんの意見に「ヘアカラーは美容師のスキルとしては基礎編に近く、シャンプーやブローの次に覚える技術なのでブランクのある美容師でもやりやすい」との文言です。

私は、ここに商売人の本性を見たような気がしました。

美容室におけるヘアカラーはかなり高度な知識と技術を必要とし、アレルギーなどの危険性も考えられるために高いスキルが要求されるプロフェッショナルな仕事の一つなのです。

例えば塗り方一つで染まり方や損傷具合も違うし、かぶれも起こしてしまう事もあるのです。

それなのに「ヘアカラーは簡単だからスキルの低い美容師でもOK」なんて考えは美容師は愚か、お客様をも見下しているように思えてなりません。

昔ある美容メーカーの研究員さんがディーラーの担当者と同行で当店にヘアカラー剤の新製品を持って来た事がありますが、その時に「これ良いですよ」と言われたので、どう良いの?と聞くと「安くて簡単に染めれるため素人でも出来るくらいだから」と説明しました。

これが15年以上も前の話で、この時はメーカーの研究員もディーラーの人も美容経験のない人なのに美容師も随分舐められたものだな~って思ったことを思い出しました。

そこで「それなら素人さんに売ってあげたら?」と答えました。

すると流石にメーカーの研究員さんは「今は難しい薬剤は若手の美容師には評判が悪く、経営者には低コストでないと怒られる」と反論しました。
(これがほとんどのメーカーの思想であり、だから私は自分で商品開発をすることにしたのです)

確かに、そんな事を言う美容師がいる事も残念な事ですが「でも私が本当に欲しいのは値段が高くてもカブレない、そして傷まない、そんな安全な薬剤を開発してくれたら喜んで仕入れる」と言うと2人とも不機嫌な顔をして帰りました。

でも、それがプロであり美容室で施術を受けて下さるお客様に対する礼儀ではないのかなと思っています。

15年以上も前に「素人でも簡単に染まる」と聞いた時に既にヘアカラー専門店が出来るのだろうな~と思ったことがありました。

でも、私の尊敬している職人さんが「○○○の専門店ほど実は技術が怪しいものですよ」と教えてくれました。

それは自分の職の中で、どんなお客様にも対応するためには、それなりの経験と実績を摘むために幅広く勉強しないといけないからです。

だけど〇〇〇専門店と言うと「専門店だから安心」と言う消費者の心理と合致する事で商売が上手く成立するからです。

でも本当に優れた職人なら、どのようなお客様にでも対応できる適応能力を持っていると思うし、そのような人が達人として慕われているのだと思います。

これから先も毛染め専門店と言う新しいジャンルの美容サロンが拡大しそうですが、そこには全ての技術が出来る普通の美容師が働いていて欲しいと願います。